読売新聞掲載記事

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読売新聞掲載記事(平成16[2004]年11月22日)

以下、読売オンライン
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/sa4b2201.htm
より引用

ワイヤを固定しない矯正 歯の痛み少なく短期間で

東京都の小学6年生A子さん(12)は、いわゆる「受け口」(反対咬合(こうごう))のため、かみ合わせや歯並びが良くなかった。そこで、新型の装置による歯列の矯正治療を歯科医院で受けた。治療期間が短いうえ、治療に伴う痛みも少ないのが特徴で、従来なら1年程度以上は必要だった装置の装着が7か月半で済み、歯並びがきれいになった。A子さんは「先に矯正を始めていた友だちより早く終わった。『歯がきれいになったね』って言われるのがうれしい」と笑顔を見せる。

歯並びが悪いと、見た目が気になるだけではない。磨きにくい部分が多いため虫歯になりやすく、かみ合わせの問題から、口の開閉がうまくできない顎(がく)関節の異常や肩こりも引き起こしかねない。人前で話すことに負い目を感じたりする場合もある。

そこで広まってきたのが、歯並びを矯正する治療だ。

治療は、まず歯の表面に矯正装置(ブラケット)を接着剤で固定する。これに、あらかじめ骨格に合わせ最適な歯列に調節した形状記憶合金のワイヤを通し、ワイヤが元に戻る力で徐々に歯を動かしていく。

ただ、歯並びが整って装置が外れるまで、これまでの方法では子供で1、2年、大人では2、3年程度かかり、期間の長さが治療の障害になっていた。さらに、ワイヤを装置に縛りつけて歯に力をかけるため、痛みもあった。

これに対し、「デーモンシステム」と呼ばれる新型装置は、治療期間が短くなり、治療時の痛みも少なくなる場合が多いことが特色だ。

新装置では痛みが少ないのは、従来の方法と違ってワイヤを固定せず、装置の内側の透き間にワイヤを通す「ゆとり」の構造のためだ。

「ワイヤを通すだけでも、形状記憶で元に戻ろうとする力が、歯にかかる舌や唇の圧力を手助けし、ちょうど良い位置に歯が動いていく。無理に歯を動かすのではなく、人間の生まれ持った力を利用するので痛みも少ない」。東京・世田谷の矯正歯科医、近藤悦子さんはそう説明する。

もっとも、欧米で多くの子供が矯正治療を受けているのに比べ、日本は少ない。国内では1割程度の人は歯列矯正が必要とみられるが、実際に治療を受けているのはそのうち1割ほどに過ぎない。

原則として治療に保険がきかないことも要因だ。大人の場合、一般的な矯正歯科では70―100万円程度かかる。一方、新装置は治療期間が短いぶん安く済む場合があり、60万円弱の診療所もある。

ただ、新型装置には目立ちやすい難点がある。従来の装置はセラミック製の透明のタイプや、歯の裏側に装着するものがあるが、新型は金属製。上半分が透明の最新型も登場したが、歯の裏側に着けることは構造上できない。また、どの患者でも治療期間が劇的に短くなるわけではない。

矯正後も歯並びが良好に保たれるかなど、まだ長期の治療成績のデータは不十分だが、治療経験が豊富な名古屋市の矯正歯科医、池森由幸さんは「現在行われている方法を改良したものなので、長期的な効果の差はない」とみている。(石塚 人生)