日本大学 研究発表
日本大学 松戸歯学部 矯正学講座の研究発表をご紹介します。
デーモンシステムの矯正治療中の発痛物質産生に対する効果
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日本大学 松戸歯学部 |
矯正治療のデメリットのひとつに治療中の痛みがあります。
矯正治療の痛みは歯が浮くような違和感や、しめつけられるような痛み、噛むと痛いなどと表現され、ワイヤーを交換したり、調節した後に生じ、1週間程度続きます。
これに対し、「デーモンシステム」は、ハイテクブラケットと最先端ワイヤーにより、治療時の痛みも緩和されることが特色とされています。
しかしながら、この現象の科学的裏づけはされていません。
そこで、歯科矯正治療中の患者の歯肉溝滲出液中の発痛物質のひとつであるサブスタンスPの産生量を従来のブラケットと比較し、デーモンシステムの痛みの軽減効果について検討しました。
痛みのメカニズム
矯正治療中の痛みのメカニズムは、ワイヤーなどによって生じる器械的な刺激が、ある強さ以上に達すると歯周組織が反応し、発痛物質(サブスタンスP、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン等)や発痛増強物質(プロスタグランジン等)を生じ、痛みの神経終末を刺激し、痛みが発生します。
歯肉溝滲出液
歯肉溝浸出液は歯肉溝から分泌され、炎症時にその量は増加します。歯に矯正力が加わると歯肉溝浸出液中のサブスタンスPが増加することがわかっています。
(Yamaguchi et al., Eur J Orthod. 2006)
資料および方法
対象は、日本大学松戸歯学部附属歯科病院矯正科にて治療中の患者に対して、デーモンシステム(向かって左側:患者さんの右側)と従来のブラケット(向かって右側:患者さんの左側)を装着し、移動中の歯の歯肉溝滲出液中のサブスタンスPの産生量を検討しました。
【ブラケットの装着状態】 | |||
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【サブスタンスP測定方法】 | |||
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結 果
ブラケットおよびワイヤー( .014 Ni-Ti)装着24時間後の歯肉溝滲出液中のサブスタンスPの産生量は、従来のブラケット(グラフ右側)に比べてデーモンシステム(グラフ左側)は1/2~1/3に抑制されました。

結 論
デーモンシステムは、従来のブラケットに比べて、矯正治療時の痛みを軽減することがわかりました。
また、もうひとつの研究結果として、デーモンシステムは矯正治療中の成人患者の歯周病原因菌の増加も抑制し、歯周組織に与えるダメージも従来の装置より少ないことがわかりました。
「摩擦力軽減ブラケットによる成人矯正患者に対する歯周病原因菌の検討」
国井隆一、池田忠貴、山口 大、兼川美香、葛西一貴
(平成16年第63回日本矯正歯科学会大会・福岡にて発表)